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新英語教育研究会神奈川支部HP

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私のお気に入り My Favorite Things

2018/08/30 
「食べ物の好き嫌いの話題では丸ごと1個食べないで切り身を食べるものは一般論では単数形にする」を踏まえて書き直しました。

■ My Favorite Things No.81 2002.1

■『犬が好き』事件を検証する
 大学生だった私が、塾で中学1年生を教えていたある日、一緒に働いている恩師と「『犬が好き』と英語で何というか?」で議論になった。
 恩師の主張:I like a dog.と絶対に言わないということはないのだから、I like dogs.とI like a dog.、どちらを言ってもかまわないではないか。
 「I like dogs.だと思うけど…」と、私はこの主張には不満だったが、その時点では「理論武装」できておらず、弁の立つ恩師には勝てず、泣き寝入りした(悲しい!)。この議論が今の私を作ったと言っても過言ではない。そして30歳を過ぎた頃、私を助けてくれたのはレトリック研究で有名な佐藤信夫さんと仲良しの記号学者ロラン・バルトくんとソシュールくんだった。ありがとう、みなさん!

■ソシュールの「統合と連合」で無冠詞を解明!
 ソシュールの「統合と連合」の概念をあらわした「古代建築の柱」のたとえをご紹介します。
 「ひとつひとつの言語単位は、古代建築の柱のようなものだ。柱は建築物の他の部分、たとえば台輪などと実際に隣り合っている関係にある(統合関係)。しかし、もしこの柱がドリア様式のものだとすれば、それはわれわれの頭の中に、他の建築様式、イオニア式やコリント式との比較を呼び起こす。これが潜在的な置換関係(連合関係)である。」
紙数が限られていますからワープしてしまいますが、これが大ヒントになったのです。

■無冠詞は「対比」、説明文向き
(リンゴやナシではなく)「オレンジが好き」のように「種類の違い」を対比的に説明する場合【無冠詞】を使います。

対比する【無冠詞】
・数えられる名詞[数を数える場合]は複数形
I like ┌ oranges.(リンゴやナシではなく)オレンジ
   ├ apples. リンゴ
   ├ pears. ナシ
   ├ …  …
・数えられない名詞[量で量る場合]は単数形
(食べ物の好き嫌いの話題では丸ごと1個食べないで切り身を食べるものは単数形にする)
I like ┌ melon. メロン
   ├ watermelon. スイカ
   ├ …  …
(適用:Give me water.と無冠詞で言うと「(他のものではなく)水をくれ」と強く聞き手には聞こえます。そこで話し手はGive me some water.として話題のものだけに言及します。「対比を避けるsome」よ、くじけず頑張れ!)

■a / an / someは「対比を避ける」、物語文向き
(a) 1. I've just bought a melon.(1個)
2. I've just bought some oranges.(数個)

(b) I had some melon(ある程度の量)for breakfast.

(a) 対比を防ぐ【a/an+単数形 some+複数形】
(リンゴやナシではなく)「オレンジを買った」と対比したいなら別ですが、ふつうに「オレンジを買った」と語りたい場合、並列関係にある他のメンバー[例えば他の果物であるリンゴやナシ]を連想させない言い方として【a/an/some】をつけます。
(蛇足:I like a dog.が単文として不自然なのは、Yesterday I saw a girl named Maria.のように「どんなa dog / a girlか」を物語る語句が抜けていたからなのです。21世紀、無意味な2文比較はもうやめようよ、チョムスキー君。)

(b) 量を示す【some+単数形】
「メロンを食べた」と言っても、まるまる一個、 a melonを食べる人は少ないのでは? まるまる1個食べたと言いたいなら別ですが「(切ってある)メロンを食べた」とふつうに言いたい場合、1切れでも2切れでも関係なく「量」を漠然とはかる言い方として簡便に some melonと言います。
・無冠詞の学習に最適な歌として選曲しました。「理屈抜きに楽しく」あるいは「理屈つきで(?)納得の上で」歌っていただけたらと思います。
参考文献:ロラン・バルト『零度のエクリチュール』所収「記号学の原理」みすず書房 1971
マーク・ピーターセン『日本人の英語』岩波新書 

■ My Favorite Things Julie Andrews

私のお気に入り(♪映画『サウンド・オブ・ミュージック』)
 「そうだ、京都 行こう」というCMコピーで、94年のJR東海のキャンペーンソングにもなったこの曲は、映画『サウンド・オブ・ミュージック』のなかで、主人公マリアが雷におびえた7人の子ども達を励ましながら歌います。

“雨粒”(バラにくっついている…)と
“ひげ”(子猫にくっついている…)
ピカピカの“銅ヤカン”と
あたたかな“毛糸のミトン”
茶色い“紙パッケージ”
(結んであって…ひもで)
これらは私のお気に入りの一部

クリーム色した“子馬”と
パリパリの“アップル・シュトルーデル”[渦巻パン]
“ドアベル”
“そりのベル”
“シュニッツェル”[子牛肉のカツレツ](ヌードル添え)
野生の“ガン”
(ガンは飛ぶ…月を翼に乗せて…)
これらは私のお気に入りの一部

“女の子”(白い服を着て…)
(サテンのサッシュ[飾り帯]付き)
“雪片”
(雪片はある/私の鼻とまつげに)
銀白の“冬”
(冬は溶けて…春[泉]になる)
これらは私のお気に入りの一部

‘犬’が噛んだって
‘ハチ’が刺したって
悲しいときだって
私のお気に入りを思い出すだけ
それで、気分はそんなに悪くないみたい


《ポイント》名詞の【複数形】の使い方:
 英語では、「リンゴ」のように1、2、3個…と数えられる名詞を話題にする場合で、「果物では(ミカン/レモン…などではなく)リンゴが好き」のように「種類の違いを対比して話題にしたい」時、apples, oranges, lemonsのように、名詞の【複数形】を使います。どんな種類のものがマリアのお気に入りなのか想像しながら、大きな声で歌おう!


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